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「3割のエリート」と「7割の非正規」を育てる、それが日本の教育の実態

知ったかぶりでは許されない「学校のリアル」 第9回

◆7割の非正規を生み出す教育へ

 そして、企業は正規を減らして非正規を増やす方向へ猛然と走りだす。すでに企業は賃金の安い中国などへ生産拠点を移すなどの人件費カットに力を入れていたが、その企業の背中を報告書が押して、国内でも人件費カットに走らせたのだ。2015年には労働者派遣法を改正し、政府も非正規を増やす方向に突き進んでいく。報告書が打ち出した「正規3割」へ、日本全体が急速に動いていくのだ。

「正規3割」は幹部を約束された管理職であり、組織でのリーダーであり、エリートである。経済界・産業界は、リーダーであるエリートを求めていることになる。

 この動きに、教育も巻き込まれざるをえなくなる。非正規では生活もままならないという実態が大きく宣伝されたこともあって、「我が子は3割に入れなくてはならない」という親の思いは強まり、子どもたちも引きずられていく。そのために進学校、一流大学にはいるための学力重視の風潮が強まっていく。

 小渕恵三政権のときにつくられた「教育国民会議」は2000年12月に最終報告を発表するが、そこには「リーダー養成のため、大学・大学院の教育・研究機能を強化する」と「エリート養成」が謳われた。さらに第1次安倍晋三政権のときに発足した「教育再生会議」は2007年6月に第2次報告を発表し、そのなかの「目指す人間像」で「国際社会で活躍できるリーダーを育成することにも力を注がなければならない」とエリート教育の推進を掲げている。

 さらに文部科学省は、「高等学校等におけるグローバル・リーダー育成に資する教育を通して、(中略)将来、国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を図ることを目的」として「グローバルハイスクール(SGH)」に指定する制度を2014年にスタートさせ、これまでに全国で100校を超える高校が指定を受けている。

 エリートと言っていい「3割の正規」を求める経済界・産業界の要請に応じて、教育は「エリートづくり」に奔走している。そして、7割の子どもたちには「エリート以外=非正規」を押しつけようとしている、と言っていい。それを、教育と呼べるのだろうか。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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